乳歯入門
生後〜2歳半頃
「むし歯予防に効果的な歯ブラシや歯みがき剤の選び方って、どうすればいいの?」「フッ素は歯科医院で塗ってもらったほうがいい?」と、多くのママが悩んでいます。
『乳歯のむし歯を防ぐために今日からできること』シリーズの第2回は、前回に引き続き小児歯科医・歯学博士の坂部潤先生がママの疑問や不安にお答えします!
坂部 潤(小児歯科医、歯学博士)
日本小児歯科学会認定小児歯科専門医。東京・目黒、成城、麻布、代々木上原にある小児歯科専門医院キッズデンタルを開業。継続管理型の小児歯科専門医療を提供している。
坂部先生、正しい歯ブラシの選び方を教えてください!うちは、イヤイヤ期の歯みがき嫌いを和らげるために息子が大好きなキャラクターの歯ブラシを買っちゃうことが多いんですけど、どんなものを選べばいいのでしょうか?
坂部先生
お子さん用の歯ブラシは、まずは年齢に合ったもの、そして毛のかたさが「やわらかめ」のものを選ぶのが一般的ですね。より安全性を重視した、のどに刺さりにくい形状のものも発売されていますので、安全なものを選んで使用するのもいいですね。
お子さんは歯ブラシの毛をガシガシと噛んでしまいがちなので、たった数日で毛先がぼさぼさになることもあり、毛先の開いた歯ブラシはブラッシング効果が極端に落ちます。そのため、子ども自身が使う歯ブラシと仕上げみがき用の歯ブラシは分けて使うことをおすすめします。
子ども用の歯ブラシで仕上げみがきしてました……。分けて使ったほうがいいんですね。
坂部先生
仕上げみがき用の歯ブラシは大人が使いやすいよう大きさ等が工夫されています。特に汚れが残りやすい奥歯など、細かい部分もみがきやすいので、仕上げみがき用の歯ブラシも使ってみてください。歯ブラシの交換時期は、ヘッドの部分を裏側から見てみて、毛先が広がってしまっていたら替え時です。目安はおよそ1カ月くらいですね。
歯とお口のケア用品はいろいろありますよね。よく歯科医院ですすめられるデンタルフロスって、子どもも使った方がいいんですか?
坂部先生
デンタルフロスは歯と歯の間を掃除するのに使いますので、お子さんの乳歯の状態によります。多くの場合、大きな永久歯が生えてくる時に備えて歯並びがスカスカなため、歯ブラシでしっかり歯垢(プラーク)を落とせばデンタルフロスを使わなくても大丈夫な場合が多いです。
ただ、あごが狭かったりして歯と歯の間のすきまに余裕がなく、歯ブラシだけだとうまく歯と歯の間がみがけないお子さんの場合は、乳歯であってもデンタルフロスが必要です。
まずは、自分の子どもの歯並びをよーく観察したほうがいいんですね。あと、子ども用のデンタルリンスはどうでしょうか?
坂部先生
デンタルリンスは普段の歯みがきの後に行うもので、歯ブラシで落としきれない細かな部分の細菌も殺菌してくれます。また、丁寧な歯みがきができないときにデンタルリンスを使用すると便利です。
ただし、デンタルリンスをすれば歯みがきはしなくても良いということではありませんので、基本はやはり歯みがきです。できるときにあわせたケアを行うといいですね。
歯と歯の間(歯間部)は歯ブラシの毛先が届きにくいためプラークが残りやすく、むし歯や歯周病が発生しやすい場所です。細いナイロン繊維からできているデンタルフロスを歯間部の清掃に使用するとその部分のプラーク(歯垢)を効率よく取り除くことができます。
タフトブラシは、毛束が1つのヘッドの小さな歯ブラシです。
普通の歯ブラシでは毛先が届きにくいところの清掃に適しており、歯ブラシでみがいた後、タフトブラシでの清掃を追加することで、みがき残しやすい「歯と歯の間」や「歯と歯肉の境目」のプラーク(歯垢)を効率よく除去することができます。
フッ素が歯にいいって聞いて、何となくフッ素配合の歯みがき剤を選んで使ってるんですけど、そもそもフッ素って何ですか?
坂部先生
フッ素は自然界に存在する元素の一つで、歯を丈夫にしたり、むし歯菌を抑制する作用があるため、世界的にもむし歯予防効果が実証されている物質です。このフッ素の効果を得るためには、口の中にフッ素がとどまっている時間ができるだけ長いことが大切です。
そのため、フッ素配合歯みがき剤を使うときは、年齢に合わせた量を歯の萌出~2歳は「切った爪程度」の少量を用いて、3〜5歳頃は5mm以下の分量を目安に使いましょう。また、うがいも5〜10mlの水で1回程度行うのが推奨されています。
その他にも、フッ素を取り入れる方法として最初はなにもつけずに歯みがきをして汚れを落とし、次に「フッ素配合ジェル」を乾いた歯ブラシにつけて、歯全体に塗るという方法もあります。
そのあとはうがいをせず、フッ素を歯に定着させます。
へえ~知らなかった!うちでも試してみようかな。
坂部先生
さらにフッ素を取り入れる方法としては、高濃度のフッ素を塗る方法があります。
じゃあ、家じゃなくて歯医者さんで塗ってもらったほうがいいんですか?
坂部先生
家では日常的にフッ素配合歯みがき剤や、フッ素配合ジェルを使って歯を丈夫にして、定期的に歯科医院に行って目には見えないみぞの奥や、歯と歯の間の細かな部分まで修復してもらえば、さらに丈夫な歯を保つことができますよ。
フッ素とは、自然界に存在する元素の一つで、海藻やお茶などの身近な食品にも含まれているものです。ビタミンやミネラルと同じ、人間に必要な栄養素でもあります。
フッ素(F)は私たちの身近な自然界にある元素の一つで、お茶や魚介類など多くの食品に含まれています。フッ素はむし歯予防に欠かせないだけでなく、丈夫な歯や骨をつくるために大切な役割を果たしています。
天然の代用甘味料の一つで、むし歯の原因になるミュータンス菌の数を減らす作用があります。
ミュータンス菌は糖分を原料にして酸を作り出し、歯の表面のエナメル質を溶かしますが、キシリトールはミュータンス菌が食べても酸を出せず、その活動を弱めることができます。
むし歯への予防効果が高い特徴から、子ども用のお菓子などの商品によく配合されています。体質によってはおなかがゆるくなったりするので、適量をおやつ代わりに食べさせるなど、うまく子どもの食生活に取り入れましょう。
シーラントというむし歯の予防法があるって聞いたのですが、くわしく教えてください!
坂部先生
それには、まず歯の構造からご説明しますね。
私たちの歯は、汚れがたまりやすいところからむし歯になります。主に歯と歯の間か、歯のみぞ、歯と歯ぐきの境目です。
歯と歯の間はデンタルフロスを使えば汚れを落とせますが、歯のみぞは顕微鏡レベルで見ると、実は歯ブラシの毛一本よりも細いことがあります。どんなにしっかりみがいていても、お口の環境次第でむし歯になってしまうことがあるんです。
坂部先生
そのため、細いみぞに汚れが入り込まないように、特別なフッ素入りの樹脂を使ってあらかじめ穴を埋めておく方法がシーラント処置です。
樹脂からフッ素がちょっとずつ染み出るので、周りの歯も丈夫にしてくれる仕組みです。
うちの子もシーラントをしてもらえますか?
坂部先生
ご希望なら、一度歯科医院を受診してみてください。
特に、生えたてのころは歯質が未成熟で、むし歯になりやすいです。また、永久歯は2年かけてだんだん大人のかたさになるため、この間にむし歯になりやすいんです。
へ〜、そうなんですね!勉強になりました。
乳歯のむし歯(虫歯)を防ぐためにママが今日からできること(3)に続く
※治療の開始時期の目安や方法は一例を紹介しています。お子さんの状況により、異なる場合がありますので、気になる方はかかりつけの歯科医院でご相談ください。
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最近、ママとパパが「絶対にうちの子をむし歯になんかさせない!」って、すごく真剣になってるの。スーパーでたくさんの歯ブラシや歯みがき剤を見ながら「どれがいいんだろう……こっち?いや、こっちのほうが……」ってブツブツ言ってる。そんなにちがうものかな?