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妊娠時に気をつけたい感染症「風疹(ふうしん)」

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ママがパパに「おなかの赤ちゃんに風疹がうつったら大変だから、絶対にすぐ予防接種を受けてね」って。ママが「フウシン」にかかると、おなかの中にいるわたしが病気になっちゃうことがあるんだって。大丈夫かなあ。

風疹は妊娠中に感染すると、赤ちゃんが「先天性風疹症候群」という病気になる可能性があるため、妊娠初期の妊婦さんは特に気をつけたい病気です。風疹の免疫がない30代~50代の男性が感染源になることが多いので、パパたちが当事者意識を持つことも大切です。産婦人科医・医学博士の竹内正人先生に風疹についてお話を聞きました。

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風疹の免疫が少ない男性世代がいる?!

風疹は「風疹ウイルス」に感染することで起こる、急性の感染症です。春から初夏にかけて流行しやすく、せきやくしゃみなどの飛沫感染や接触感染によって人から人へとうつります。

厚生労働省は、「早期に先天性風疹症候群の発生をなくすこと」「2020年度までに風疹の排除を達成すること」を目標に、感染防止につとめてきました。ところが2018年夏から関東地方を中心に風疹が流行。幸い2020年以降、患者数は減少していますが、いまだに目標は達成されていません。

風疹の流行の原因は主に2つ考えられます。
アジア方面から来た海外旅行者が風疹ウイルスを持ち込んでくることや、日本人男性の30代~50代が風疹の免疫を持っていないことも流行の原因と考えられます。

特に1962(昭和37)年4月2日から1979(昭和54)年4月1日生まれの男性は注意しましょう。これまで学校などで風疹の定期接種を受ける機会がなかった世代ですので、風疹の流行源になりやすいのです。

風疹って、どんな症状が出るの?

ウイルスに感染してから約2~3週間後に、発熱や小さなピンク色の発疹、リンパ節の腫れ、関節痛などの症状があらわれます。比較的症状は軽く、なかには症状がなく感染に気づかない人も15~30%程度います。まれに数千人に1人の割合で、脳炎や血小板減少性紫斑病(血液中の血小板数が減少して出血しやすくなる病気)などの合併症が起こって重症化することもあります。

風疹患者になった人が他の人に感染させてしまう時期(感染可能時期)は、ピンク色の発疹が出る前後の約1週間です。空気感染するほどの強い感染力ではありませんが、風疹の免疫がない人たちの集団がいた場合、1人の患者から5~7人にうつってしまうといわれています。

風疹と麻疹(はしか)の違いは?

麻疹(はしか)も風疹も、発疹や発熱などの症状が起こる急性ウイルス感染症です。ただ、麻疹(はしか)が重い症状になりやすく伝染力も非常に強いことに比べて、風疹は症状が軽く感染力もそこまで強くはありません。風疹は別名「三日ばしか」とも言われるように、3日程度で治ることが普通です。

さらに大きな違いは、おなかの赤ちゃんへの影響です。麻疹(はしか)は直接的な影響はありませんが、風疹はおなかの赤ちゃんにうつると目や耳、心臓などに先天性の障害をもつ「先天性風疹症候群」になる可能性がある病気です。風疹が、麻疹(はしか)と同程度に重大な病気として警戒されているのはそのためです。

感染経路 感染可能期間
(人から人にうつる時期)
主な症状など おなかの赤ちゃんへの影響
風疹 飛沫感染(せき・くしゃみ) 接触感染(手や食品、器具を経由して口から感染) 発疹の出る前後の約1週間 ●潜伏期間は感染から14〜21日程度
●発熱、小さく淡いピンク色の発疹、リンパ節の腫れ、関節痛など。無症状の人も15~30%いる
先天性風疹症候群の可能性(妊娠20週くらいまで)
麻疹
(はしか)
空気感染(せき・くしゃみの水分が蒸発して空気中に浮遊した粒子を吸い込むことで感染)
飛沫感染
接触感染
風邪のような症状(せき・鼻水・発熱など)が出る1日前から、発疹出現後4~5日くらいの間 ●潜伏期間は感染から10~12日程度
●最初にせき、鼻水、38℃程度の発熱。その2~3日後に39度以上の高熱、全身の赤い発疹
なし
感染経路
【風疹】
飛沫感染(せき・くしゃみ)
接触感染(手や食品、器具を経由して口から感染)
【麻疹(はしか)】
空気感染(せき・くしゃみの水分が蒸発して空気中に浮遊した粒子を吸い込むことで感染) 飛沫感染
接触感染
感染可能期間(人から人にうつる時期)
【風疹】
発疹の出る前後の約1週間
【麻疹(はしか)】
風邪のような症状(せき・鼻水・発熱など)が出る1日前から、発疹出現後4~5日くらいの間
主な症状など
【風疹】
●潜伏期間は感染から14〜21日程度
●発熱、小さく淡いピンク色の発疹、リンパ節の腫れ、関節痛など。無症状の人も15~30%いる
【麻疹(はしか)】
●潜伏期間は感染から10~12日程度
●最初にせき、鼻水、38℃程度の発熱。その2~3日後に39度以上の高熱、全身の赤い発疹
おなかの赤ちゃんへの影響
【風疹】
先天性風疹症候群の可能性(妊娠20週くらいまで)

妊娠20週までの妊婦さんは風疹に要注意

もしも妊婦さんが妊娠20週ころまでに風疹にかかると、生まれた赤ちゃんが耳(難聴)や目(白内障、緑内障、網膜症)、心臓などに障害をもつ可能性があります。特に妊娠初期の12週までの時期に、その可能性が高いといわれています。

妊娠1ヵ月で風疹にかかった場合、赤ちゃんが先天性風疹症候群になる可能性は50%以上。妊娠2ヵ月の場合は35%、妊娠3ヵ月で18%、妊娠4ヵ月で8%程度と、だんだん低くなります。

妊婦さんが風疹になったからといって必ずしも赤ちゃんに影響があるわけではありませんが、風疹にかかったことがなく、抗体がない(または低い)妊婦さんは、特に妊娠初期にはうつらないように気をつけることが大切です。

妊婦健診でチェック!風疹の「抗体価」

自分が風疹にかかる可能性があるかどうかは、風疹の抗体検査で分かります。
妊婦健診では、必ず風疹の抗体(抗体価)を調べます。昔予防接種を受けたけれど抗体の量が少なくなってしまった人も感染する可能性があるので、今の抗体価の数値をチェックすることはとても大切です。

風疹抗体検査には、2つの方法があります。
下の表のように、「HI法」なら陰性または16倍以下、「EIA法」なら陰性または8.0未満の数値の場合、風疹にかかる可能性があることを意味しています。

抗体がない、あるいは抗体価が低く、かつ風疹が流行している地域に住んでいる妊婦さんは、妊娠20週を過ぎるまで、できるだけ「混雑している電車やバスに乗らない」「お祭りやコンサート会場などの人ごみを避ける」など、なるべく風疹に感染しないように過ごすことが大切です。

お住まいの地域に風疹が流行していないか、国立感染症研究所のホームページでチェックしてみてください。

パパの風疹抗体検査とワクチン接種

先ほどお伝えした通り、風疹の主な患者は30代~50代のパパ世代の成人男性です。また、女性の風疹患者は20代の人が多く、主に職場(同僚や上司など)、家庭(パパや子どもなど)から感染することが分かっています。妊婦さんのいちばん身近な存在であるパパが、真っ先にMRワクチン(=麻疹風疹ワクチン)を接種して予防することがとても大切です。

ちなみに、「子どものころに風疹にかかったことがあるから大丈夫!」という人でも、実際に検査をしてみると約半数の人が実は記憶違いだったり、別の病気だったという報告もあります。パパの予防接種の記録が確認できない場合は、なるべく早く抗体検査や予防接種を受けてもらいましょう。

2019年から対象となる成人男性に風疹の抗体検査とワクチン接種が原則無料に

妊婦さんと一緒に暮らしているパパやおじいちゃん、おばあちゃんなどの同居している家族に対して、多くの地域の自治体が抗体検査やワクチン接種の費用を助成しています。地域によって条件が異なりますので、ぜひ最寄りの保健所で確認してみてください。

【関連記事】
厚生労働省ウェブサイト「風疹の追加的対策について」

まだ妊娠しておらず、これから妊娠を希望する人も、多くの自治体で風疹の抗体検査を無料で受けることができますので、保健所に問い合わせてみてください。抗体価がない(または低い)人はすぐにMRワクチンを接種しましょう。子どものころから通算2回の予防接種を受けることで、風疹をほぼ確実に予防できるといわれています。

なお、MRワクチンは生ワクチン(生きたウイルスを弱毒化して使用しているワクチン)なので、ワクチンから感染するかもしれない万が一のリスクを考え、妊婦さんは接種することができません。接種後は2ヵ月ほど妊娠を避けることが必要になります。

まとめ

風疹は命にかかわる病気ではありませんが、妊娠初期(20週ころまで)にかかると赤ちゃんが先天性風疹症候群になる可能性があります。

妊婦さん本人に風疹の免疫がない(または不足している)場合、パパをはじめとする同居している家族にMRワクチン(麻疹風疹ワクチン)を接種してもらってください。多くの自治体が無料での抗体検査・予防接種を実施しています。

まずは風疹の抗体値をチェック。
十分な免疫がなく、かつ風疹の流行地にいる妊婦さんは、妊娠20週になるまで少しの間、人ごみを避けて過ごしましょう。

竹内 正人

竹内 正人(産婦人科医、医学博士)

日本医科大学卒業後、米国ロマリンダ大学(周産期生物学)、日本医科大学大学院(産婦人科学・免疫学)を経て葛飾赤十字産院などに勤務。著書に『マイマタニティダイアリー』など。

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