妊娠期
妊娠初期
妊娠中は、むくみや貧血、便秘などのマイナートラブルが起こりやすい時期です。塩分の摂りすぎや鉄分・食物繊維不足など、食生活が原因のことも多いので、まずは食生活を見直してみることが大切です。これらの症状を改善するための食事について、管理栄養士の上田玲子先生に伺いました。
妊娠中は、出産に向けて体が変化していくため、さまざまな体調不良が起こりやすくなります。代表的なのが、むくみ・貧血・便秘です。
女性ホルモンの影響で体内の水分量が多くなり、体がむくみやすくなっています。さらに妊娠後期になると、子宮がだんだん大きくなって足から心臓への血流が圧迫されるため、足がむくみやすくなります。
妊娠すると、血液中の赤血球が増えて、おなかの赤ちゃんにたくさんの血液が送りこまれるようになります。増えた血液分を補わないといけないため、ママは貧血になりやすくなります。
女性ホルモンの働きで胃腸の動きが抑制される上に、子宮が大きくなるにつれて血液の循環が滞り、腸の動きが悪くなるので、便秘になりがちです。
これらのマイナートラブルの多くは食生活で改善することができるので、ぜひ普段の食事を見直してみてください。
妊娠中は、妊娠前と比べて体がむくみやすくなります。「塩分控えめ」の食事を心がけましょう。塩分を摂りすぎると、体が塩分濃度を下げようとして、体内に水分をためこんでむくみがひどくなります。
厚生労働省では、妊婦さんの1日の塩分摂取量を6.5グラム未満に定めています。 たっぷりの調味料やインスタント食品、お惣菜、外食での塩辛い食事は、なるべく控えめにしましょう。
ちなみに、カップラーメン1個には約5~6グラムの塩分が入っています。1個食べると、それだけでほぼ1日の塩分量に達してしまうので気をつけましょう。
「むくみやすいから、水分を控えているんです」という妊婦さんがたまにいらっしゃいますが、持病があって制限されている場合は別として、水分は気にせず飲んでも大丈夫です。たくさん水を飲む人も、まず塩分を控えるところから始めましょう。なお、水分摂取の目安は、飲み物からは1日1.5リットル前後です。
※参考:水分は食べ物にも含まれていて、日本人は食べ物から51%必要な水分を摂取しています。
体内の塩分(ナトリウム)を外に排出してくれるのが、野菜や果物、イモ類や大豆製品などに豊富に含まれている「カリウム」です。腎臓系の持病がないかぎり、カリウムの1日の摂取量に上限はありませんので、どんどん食事に取り入れましょう。
カリウムは水に溶けやすいので、野菜はなるべく電子レンジで調理したり、汁ごと食べられるスープや煮物にするとよいでしょう。果物なら、調理せずに丸ごと食べられるので成分が流れ出す心配もありません。朝食の一品やおやつにぜひ添えてください。
果物の種類 | 1食あたりの量 | カリウム量(mg) |
---|---|---|
アボカド | 140g(1個) | 1008 |
メロン | 126g(1/4個) | 428 |
桃 | 210g(1個) | 381 |
バナナ | 90g(1本) | 324 |
野菜の種類 | 1食あたりの量 | カリウム量(mg) |
---|---|---|
かぼちゃ | 265g(1/4個) | 1185 |
大根 | 230g(1/4本) | 520 |
枝豆 | 80g(1皿) | 470 |
トマト | 165g(1個) | 346 |
芋の種類 | 1食あたりの量 | カリウム量(mg) |
---|---|---|
さつまいも | 200g(1本) | 940 |
長芋 | 180g(1/4本) | 774 |
じゃがいも | 135g(1個) | 553 |
里芋 | 40g(1個) | 256 |
大豆食品の種類 | 1食あたりの量 | カリウム量(mg) |
---|---|---|
木綿豆腐 | 300g(1丁) | 420 |
豆乳 | 200ml(1カップ) | 390 |
おから | 100g | 350 |
納豆 | 50g | 330 |
乳製品の種類 | 1食あたりの量 | カリウム量(mg) |
---|---|---|
牛乳 | 200ml | 310 |
ヨーグルト | 120g | 205 |
スライスチーズ | 20g(1枚) | 160 |
日本人は、約7割の塩分を調味料から摂っています。調味料の摂りすぎには気をつけましょう。味噌や醤油など、減塩の商品もいろいろ出ているのでぜひ使ってみてください。ちなみに、家にある普通の醤油をだしで2倍に薄めれば、手軽に減塩醤油が作れます。
全てのおかずを薄味で作ってしまうと、満足感がなくなり、食欲が落ちてしまう人もいます。塩分を使わない酢の物や、薄味のおかずとあわせて、1品だけ塩味が濃いお漬物などがあると、味にメリハリがついて満足感が高まります。
「今日は塩分を摂りすぎたかな」という時は、例えば夕食のお味噌汁をやめて、牛乳や麦茶などの飲み物にするとよいでしょう。お味噌汁は1杯約1.2グラム程度の塩分を含んでいるので、1日1杯程度にしておいたほうがよいといわれています。
「鉄欠乏性貧血」は、妊婦さんに多い症状です。鉄分はサプリメントから摂取してもよいのですが、それだけに頼ると他の栄養素が摂りにくくなってしまいますので、食事からバランスよく摂れるようにしておきましょう。
「ヘム鉄」といわれる魚や肉などの動物性食品に含まれる鉄は、吸収率が約50%と高いのでおすすめです。赤身肉やレバー、あさり、カツオなどをメインのおかずに取り入れてください。
「非ヘム鉄」といわれる吸収率の低い鉄分を多く含む野菜や穀類は、妊娠中期以降、吸収率が15%から40%へと大幅にアップします。ほうれん草や小松菜、玄米などを食べましょう。
食事から鉄分を摂取するのはもちろん、鉄分の吸収率を上げることも大切です。体内の鉄分の吸収率をよくするために、「クエン酸」と同時に食べることをおすすめします。レモンやオレンジなどの柑橘類、いちごやラズベリー、梅干しなどのすっぱいものは、鉄分の吸収をサポートしてくれます。
例えば、赤身肉をレモンステーキにしたり、ほうれん草サラダにオレンジを加えたりなどして、食べ合わせを工夫してみましょう。
鉄なべや鉄のフライパンなど、鉄でできた調理器具で料理すると、鉄が溶け出すので鉄分の吸収率が大幅にアップします。
特に煮物は、鉄なべで煮るだけで2~3倍ほど鉄分が増えるのでおすすめです。扱いやすい小サイズの鉄なべも売っていますので、ぜひ食卓に取り入れてみてください。
紅茶やコーヒーに含まれる「タンニン」、ココアやほうれん草に含まれる「シュウ酸」という成分は、鉄分の吸収率を下げてしまいます。
紅茶やコーヒー、ココアは食後30分以上経ってから飲みましょう。ほうれん草は、よくアクを取ってから使ってください。
栄養素 | 含有食品 |
---|---|
鉄 | 赤身魚・肉、卵黄、ほうれん草、小松菜など |
銅 | 牛レバー、肉類、牡蠣、豆類、ほうれん草、春菊 |
ビタミンB12 | 卵黄、牛豚肉、にしん、さば、牡蠣、脱脂粉乳 |
葉酸 | ほうれん草、ブロッコリー、アスパラ、卵黄、牡蠣、ピーナツ |
ビタミンB16 | 玄米、大豆、くるみ、ピーナツ、鮭、いわし、さば、鶏肉、豚肉、バナナ、アボカド |
ビタミンB2 | 脱脂粉乳、牛乳、チーズ、納豆、干ししいたけ |
ビタミンC | パセリ、ブロッコリー、 芽キャベツ、ピーマン、小松菜、ほうれん草、柑橘類、いちご、甘柿、キウイフルーツ |
妊娠すると女性ホルモンの影響のほか、大きくなった子宮が大腸を圧迫するので、大腸の動きが低下して便秘になりやすくなります。便秘を防ぐための3つの対策を心がけましょう。
1つ目は、水分補給です。体内の水分が足りなくなると、大腸で便が硬くなって便秘の原因になります。水分はこまめに摂るようにしてください。まずは朝、コップ1杯の水か牛乳を飲んで、腸の動きを活発にするところから始めましょう。
2つ目は、善玉菌を食べ物から摂ることです。
ヨーグルトや乳酸菌、納豆、みそ、ぬか漬け、発酵食品など、善玉菌の入った食品を食べましょう。腸内の善玉菌をたえず補給することで腸内環境が整い、便秘の改善につながります。
3つ目は、善玉菌を増やすことです。
便秘対策には、食物繊維が多いものを食べることも大切です。食物繊維は善玉菌のえさになり、腸内の善玉菌を増やします。さらに食物繊維が直接腸管を刺激するため、便通をよくしてくれる効果もあります。
食物繊維にはいくつかの種類があります。「水溶性食物繊維」は果物類(りんご・いちご)や海藻類(こんぶ・わかめ)などに含まれていて、「不溶性食物繊維」は野菜類・芋類・豆類・穀類などに含まれています。どちらも便秘予防に効果大です。
さらにバナナや玉ねぎに含まれる「難消化性オリゴ糖」や、玄米・雑穀・冷えたご飯・冷えたパスタなどに含まれる「難消化性デンプン(レジスタントスターチ)」も食物繊維の一種。善玉菌のえさになるので、ぜひ毎日の食事に取り入れてください。
食物繊維は便秘を解消するだけでなく、腸内の善玉菌も増やしてくれる妊婦さんの味方です。毎日の食事に上手に取り入れましょう。
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上田 玲子(栄養学博士、管理栄養士)
白梅学園大学・短期大学非常勤講師。(株)トランスコウプ総研取締役。日本栄養改善学会評議員、日本小児栄養研究会運営委員。著書に『人生で一番大事な最初の1000日の食事』など。
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