妊娠期
妊娠初期
妊娠初期などに起きやすいつわりの影響で、歯みがきができずに困っていませんか?
今回は日本歯科大学附属病院 マタニティ歯科外来の代田あづさ先生から、つわりの時に心がけておきたい歯みがきの方法や、気持ち悪くなりにくい具体的なオーラルケアの対策を伺いました。
私が勤務するマタニティ歯科外来には、つわりの症状で歯みがきが十分にできなくなり、むし歯や歯肉炎が悪化してしまった妊婦さんも治療に訪れています。
つわり対策として私がアドバイスしているのは、主に3つあります。
この3つのポイントについて、順番に説明していきましょう。
歯ブラシを口に入れて、小刻みに小さく動かすと、口に伝わる刺激が少なくなって楽になる妊婦さんもいます。その時に、顔を下に向けてうつむき加減でみがいたり、奥歯をみがく時は歯ブラシを横から入れてみがくと嘔吐反射が起きにくくなりますので、ぜひ試してみてください。
歯みがきの時、歯ブラシの感覚だけに集中していると気持ち悪くなりやすいようです。歯ブラシを意識しないように、テレビを見たり、ベランダに出て外を眺めながらみがく「ながらみがき」をすると、吐き気が抑まることもあります。
つわりの時は、時間帯にとらわれず、体調がよくなったタイミングで、できる範囲でみがくようにするとよいでしょう。
ただし、夜寝る前はできるだけ歯をみがくように心掛けましょう。寝ている間は、唾液の分泌量が減るので、口の中の細菌が増えやすく、むし歯や歯肉炎になりやすい状態になります。どうしても歯ブラシを口に入れるのが辛い場合は、歯みがきの代わりにはなりませんが、洗口液ですすぐなどのケアで代用していきましょう。
つわりの時は、奥歯の根元の歯ぐきや、ほっぺの内側に歯ブラシが触れただけで嘔吐反射を起こす人もいます。それを防ぐために、歯ブラシを変えてみるという方法もあります。
つわりの時に使う歯ブラシは、口の中に入れた時の圧迫感が少ないヘッド(毛がついている部分)が小さめの歯ブラシがおすすめです。例えば、ヘッドが小さい「超コンパクト」やヘッドが薄い「スリムヘッド」のタイプなどがあります。口の中に入れた時の圧迫感が少ないので、歯ぐきやほっぺを刺激せずに細かいところまでみがくことができます。
お子さん用の歯ブラシでも代用できますが、大人が持つにはハンドルが短く、ヘッドの厚さも一般的なものが多いので、みがきにくく感じる妊婦さんもいます。お店で実物を見てみて、「これなら大丈夫そう」というものを試してみてください。
歯みがき剤はミント味が定番ですが、つわりが重い妊婦さんの中には味覚が変化して「ミント味の歯みがき剤が苦手になった」という声も聞きます。
ミント味が控えめの「ソフトミント味」や、さっぱりとした柑橘系の「グレープフルーツ味」など、いろいろな歯みがき剤が出ているので試してみましょう。妊娠前は苦手だった歯みがき剤の味が、妊娠後は大丈夫になって愛用しているという妊婦さんもいます。
歯みがきがどうしても難しい時は、洗口液を使って口の中をさっぱりさせることをおすすめします。製品によって異なりますが、口臭を防いだり、むし歯や歯肉炎の予防などの薬用成分が入っているものもあります。アルコール無配合のものもあるので、自分に合うものを選んでみてください。
また、洗口液を使って口をすすぐ時は、ていねいにしっかりとすすぐことがポイントです。口の中に液体を含んですぐに吐き出すようなやり方では、口の中全体に行き渡らず、効果が十分に発揮されません。前後左右にしっかり水を動かすイメージで、ぶくぶくとすすいでください。
ただし、洗口液はあくまでも補助的に使うもので歯みがきの代わりにはならないので、少なくとも1日1回は歯ブラシで歯をみがきましょう。
ここからは、歯みがきにプラスしてやってみてほしいポイントを紹介します。口の環境をさらによくするために、体調のよいタイミングを見計らって、次のことを試してみてください。
歯と歯の間は歯ブラシの毛先が届きにくいところです。そのため、歯みがきの時にデンタルフロスもあわせて使い、歯と歯の間の汚れを取り除きましょう。初めて使う人や、つわりで奥まで歯ブラシなどを入れにくい人は、必要な長さを切り取って、指で操作して清掃する「糸まきタイプ」よりも、持ち手がついている「ホルダータイプ」の方が口への刺激が少ないのでおすすめです。
使い方が分からない人は、歯科医院で使い方のアドバイスを受けることができるので、ぜひ相談してみてください。
歯と歯の間のすき間が広く、「歯間ブラシ」を使う場合は、少量の歯みがき剤や洗口液、歯間ブラシ専用のジェルなどを歯間ブラシの毛先につけて清掃すると、汚れも取れて、口の中がスッキリします。例えば、フッ素配合のものだと、より歯と歯の間のむし歯予防の効果が高まるのでおすすめです。
歯間ブラシは歯と歯の間のすき間の大きさに合わせてサイズを選ぶ必要があるので、初めて使う人やサイズが分からない人は歯科医院で診てもらうとよいです。
妊娠中でも体調のよい時には、ぜひ歯科医院に行ってプロフェッショナルケアを受けましょう。口の中がきれいになるだけでなく、汚れがつきやすい場所や、みがきにくい場所について、個人に合ったアドバイスを受けられるので、つわりなどによって著しく口内環境が悪化することを防げます。
【関連記事】
妊婦さんも歯医者に行ってほしい”マタニティ歯科”のススメ妊娠中は、口の中の環境が大きく変化する時期でもあります。本来はサラッとしている唾液がネバネバした状態になったり、唾液の分泌量が減ることで口の中の汚れを洗い流す作用などが低下しやすくなります。
さらに歯周病菌は、妊娠の状態を保つために必要な女性ホルモンを使って繁殖するため、歯肉炎になりやすいともいわれています。
つわりで歯みがきがしづらい状況になると、口の中が不衛生になりやすくなります。妊娠中は体調に合わせて、歯みがきの方法を工夫して、口の中の清潔や健康に気を付けましょう。
【関連記事】
妊婦さんが気をつけたい病気「妊娠関連(性)歯肉炎」 妊娠中に歯医者に行っても大丈夫?妊婦さんの歯と口のトラブルつわりの重さなどによって、歯みがきが無理なくできる方法は人それぞれ異なります。無理のない範囲でいろいろと試してみて、自分に合うつわりの時の歯みがき対策を見つけてみてくださいね。
日本歯科大学附属病院
マタニティ歯科外来
日本歯科大学附属病院は、妊娠中の女性が安心して歯科治療を受けられる「マタニティ歯科外来」を2010年4月に開設。妊娠期特有の口腔内の相談や歯科治療を行っている。精神的ケアも考慮し、スタッフは女性歯科医師、歯科衛生士のみで構成されている。
代田あづさ
マタニティ歯科外来長/歯科医師、博士(歯学)
会員としてご登録いただくと、お子さまの成長に合わせてパパや
ママへ「子育てに役立つ情報」を定期的にお届けいたします!
ママはつわりが大変みたいで、歯ブラシを口に入れると気持ち悪くなっちゃうんだって。「むし歯になるから、頑張ってみがかなくちゃ…」って、吐き気を我慢して歯みがきをしてる。なんだか、とってもつらそう。パパが「何かやり方があるんじゃないかな。調べてみるよ!」って言ってるよ。パパ、いろいろ調べてママを楽にしてあげてね。