妊娠期
妊娠初期
近年、妊婦さんのビタミンD不足が問題になっています。過度の紫外線対策を行うことや、ビタミンDを含む食べ物の摂取が不足すると、「ビタミンD欠乏症」になり早産などのリスクが高まるともいわれています。ビタミンD不足を解消するための方法について、管理栄養士の上田玲子先生に伺いました。
ビタミンDは、骨を丈夫にしてくれるビタミンです。カルシウムが小腸から吸収されるのを促進して骨を作るサポートをしたり、血管や筋肉のカルシウム濃度を調節する大事な役割を果たしています。
最近では免疫力を高めたり、生活習慣病やうつの予防に関わっているという研究結果も報告されています。
ビタミンDは、皮膚に紫外線を浴びることにより体内で生成することができます。また、魚類や卵(卵黄)、きのこ類などにも豊富に含まれています。適度に太陽の光を浴びることに加えて、ビタミンDが含まれる食材を毎日食べることで、私たちは生きていくのに十分なビタミンDを得られるのです。
近年、妊婦さんのビタミンD不足が問題視されています。昔に比べて欧米型の食生活になり、魚を食べる習慣が減ったことや、部屋のカーテンを開けない、屋外に出ないなどの過度な紫外線対策をする女性が増えたことなどが原因で、ビタミンDの生成量や摂取量が減少してきているといわれています。
ビタミンDが慢性的に不足していることを「ビタミンD欠乏症」といいます。カルシウムが体内に吸収されにくくなるほか、骨粗しょう症や骨軟化症の原因にもなります。
特に妊婦さんの場合は、早産や妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病のリスクが高まる傾向もあり、注意が必要です。
赤ちゃんや子どものビタミンD不足も多く、成長期にO脚などの骨の変形が起こる「くる病」が増えています。
妊婦さんはもちろん、赤ちゃんやお子さんの骨の健康な成長のためにもビタミンDは必須です。ぜひ意識して生活してみてください。
紫外線からビタミンDが生成されることから、毎日適度な日光浴をぜひ日課にしましょう。食事以外で必要なビタミンDの紫外線生成量の目安は1日5.5㎍です。夏は数分程度の日光浴で大丈夫ですので、朝夕の涼しい時間に散歩を心がけましょう。
冬は地域により日照時間が非常に短くなります。そのため、5.5㎍のビタミンDを紫外線から生成するには、昼の12時の場合は、沖縄(那覇)なら7.5分で十分ですが、茨城(つくば)では22.4分、北海道(札幌)では76.4分と、長い時間、日に当たることが必要です。
また5月生まれの赤ちゃんは、妊娠期が主に冬であることから、ビタミンDが欠乏している割合が約3割というデータがあります。11月生まれの赤ちゃんのビタミンD欠乏症が1割程度であることから、妊娠期間と日光浴、ビタミンD不足の関係があることが考えられます。
冬の時期、特に日照時間が短い北日本に住む妊婦さんは、長めの日光浴を心がけましょう。国立環境研究所地球環境研究センターのホームページには「ビタミンD生成・紅斑紫外線量情報」が掲載されています。目安となる全国の日照時間が毎日更新されているので、ぜひ参考にしてください。
日光浴が難しい時は、食事からビタミンDの摂取量を増やすことで補いましょう。
妊婦さんが1日の食事から摂取したいビタミンDの摂取基準量は、8.5㎍です。紅鮭やサンマなどの魚にビタミンDは多く含まれています。また、卵黄、きのこ類にも含まれているので、毎日の食事に意識して取り入れてみてください。
食事でなかなか摂取できない場合は、サプリメントなどもあります。ただ、ビタミンDは体内に蓄積されやすいので、サプリメントの1日の摂取量を守り、大量に長期間飲み続けることは止めましょう。なお、1日のビタミンDの上限量は成人で1日100㎍です。
魚の種類 | 1食あたりの量 | ビタミンD量(㎍) |
---|---|---|
紅鮭 | 60g(1切れ) | 19.8㎍ |
サンマ | 98g(1尾) | 15.4㎍ |
イワシの丸干し | 30g(1尾) | 2.4㎍ |
シラス(半乾燥) | 15g(大さじ2) | 9.2㎍ |
ニシン | 160g(1尾) | 35.2㎍ |
アンコウ(肝) | 50g(1切れ) | 55㎍ |
参照:文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」
キクラゲ、干しシイタケ、シメジ、エノキダケなどのきのこ類にもビタミンDが含まれています。
シイタケは、日光に当てるとビタミンDが増える特徴があります。昔の干しシイタケは天日で干していたので豊富にビタミンDが含まれていましたが、今の商品は熱風で乾燥させていることが多いので含有量が少なくなっています。
シイタケやシメジなどを調理に使う前には、家のベランダなどで30分から2時間程度、日光に当てるとビタミンDが増えるといわれています。ぜひやってみてください。
きのこの種類 | 1食あたりの量 | ビタミンD量(㎍) |
---|---|---|
キクラゲ (アラゲキクラゲ:乾燥) | 2g(2個) | 2.6㎍ |
干しシイタケ | 5g | 0.9㎍ |
シメジ(ホンシメジ:生) | 25g | 0.2㎍ |
マイタケ | 25g | 1.2㎍ |
参照:文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」
カルシウムと一緒にビタミンDを摂取すると、よりカルシウムの吸収が高まるので効果的です。
カルシウムとビタミンDの同時摂取には、カルシウム豊富な牛乳や乳製品をたっぷり使う「サケのクリーム煮」や「さんまのチーズフライ」、「きのこグラタン」、「きのこポタージュ」などのメニューがおすすめです。
<参考文献>
妊婦におけるビタミンD欠乏の実態|第70回日本産婦人科学会学術講演会 日本人正常新生児にはビタミンD欠乏症が高頻度に見られ、母乳栄養児で特に改善が遅れる|京都大学 ビタミンD生成・紅斑紫外線量情報|国立環境研究所地球環境研究センター 紫外線照射による各種キノコ中のビタミン D2含量に関する研究|日本家政学会誌 日本人の食事摂取基準(2020版) 日本人の食事摂取基準(2020版)[PDF]ビタミンDはママやおなかの赤ちゃんに必須の栄養素です。日々のバランスの取れた食事と、適度な日光浴を心がけて、ビタミンD不足を解消しましょう!
上田 玲子(栄養学博士、管理栄養士)
白梅学園大学・短期大学非常勤講師。(株)トランスコウプ総研取締役。日本栄養改善学会評議員、日本小児栄養研究会運営委員。著書に『人生で一番大事な最初の1000日の食事』など。
会員としてご登録いただくと、お子さまの成長に合わせてパパや
ママへ「子育てに役立つ情報」を定期的にお届けいたします!
おなかが大きくなってきてから「動くのがおっくうで…」ってずっと家にこもっていたママだけど、最近はパパと一緒に朝、散歩に出かけたり、庭に出て日光浴してるんだ。「太陽を浴びるとビタミンDが作られて、おなかの赤ちゃんにもいいみたい。これから体調に合わせて、なるべく外に出るようにするね」ってパパに話してる。お日さまって、体にもいいんだね!