乳歯入門
生後~2歳半頃
赤ちゃんを初めて歯医者さんに診てもらう時に、どんなことに注意すればよいのでしょうか。「歯医者さんを選ぶポイントは?」「泣いても大丈夫?」など、ママやパパが気になることを小児歯科医・歯学博士の坂部潤先生が回答します。
赤ちゃんは生後6カ月くらいから下の前歯が生えてくるので、この時期が「歯医者さんデビュー」の目安になります。特に口内環境に問題がない場合でも、3~4カ月から半年に1回のペースを目安に定期的に診てもらいましょう。
0歳の時点で口内環境に問題があるお子さんはまれです。この時期はむし歯の有無などを調べるよりも、自宅でのケアが適切かどうかを確認するのが目的といえるでしょう。1歳を過ぎると上下の歯が生えそろってくるので、かみ合わせが正しいかどうかも確認していきます。
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赤ちゃんの歯みがきはいつから?「0歳で歯医者さんのデビューはまだ早いかな?」と思う方もいるかもしれません。しかし、乳幼児期のむし歯予防には、毎日の正しい生活習慣が大切です。
早い時期から定期的に歯科医院に通うことは、ママやパパがむし歯予防の正しい知識を学んだり、歯みがきの方法などを身につけることにもつながり、お子さんの健全な口内環境を作ることになります。
赤ちゃんを連れていくには、やはり乳幼児を診ることに慣れている小児歯科がおすすめです。小児歯科は、0歳から中学校卒業くらいまでのお子さんを対象にしている診療科です。子どものむし歯予防や歯の生え変わり、ものを食べたり話したりする口の機能の発達ケアなどを幅広く診てくれるのが特徴です。
近所に小児歯科がない場合は、ママやパパのかかりつけの信頼できる歯科医院でもいいでしょう。事前に電話で予約する時は、乳幼児の診察が可能かどうかを確認してみてください。
また、歯科医院のホームページで乳幼児の診察について詳しく掲載している近隣の歯科医院がないかもチェックしてみましょう。
わかりやすく説明をしてくれる歯科医院がおすすめです。ママやパパが緊張して黙っていても、歯科医から「日ごろ何か困っていることはありますか?」「普段どんなものを食べていますか?」「歯みがきは嫌がらずにさせてくれますか?」などの質問をして、それについて分かりやすく説明してくれるところは安心できます。
近所の保護者同士の口コミや、インターネットの口コミなどもある程度参考になります。ただ、「新しい歯医者さんがいい」「男の先生は苦手」など、人それぞれ重視するポイントが異なります。
長い付き合いになるので、いくつか受診をしてみて自分に合う歯科医院を気長に探していくことをおすすめします。
赤ちゃんが、歯科医院で泣くのは当たり前なことです。ママやパパが気を使わなくても大丈夫です。歯科医院によっては、スムーズに診ることができる時間帯を案内してくれたり、個室で診てくれるところもあります。事前に電話で聞いてみると良いでしょう。
また、赤ちゃんの機嫌がいい時間帯のほうが、赤ちゃんにとっても負担が少ないのでおすすめです。大泣きをした時に吐き戻してしまうこともあるので、食事が終わったすぐの時間帯の診察は避けたほうがいいでしょう。
全国の自治体では、乳幼児をむし歯から守り、健康の保持・増進を図るための歯科健診が無料で行われています。1歳6カ月児健診と3歳児健診が一般的ですが、自治体によっては2歳児健診が行われるところもあります。お子さんの健康・発育状態を知ることができる機会ですので、ぜひ参加しましょう。
1歳半前後のお子さんが対象になります。口内環境やむし歯の有無、歯ぐきの状態などを調べます。
この時期にむし歯がある子は、ほとんどいません。ただ、まれにむし歯ができている場合があるので、歯科受診を促します。また、ごくまれに、歯の形や色が通常とは違う先天性の異常が見つかることもあります。
3歳前後のお子さんが対象です。3歳になると色々なものをよく食べるようになるので、むし歯になるお子さんも出てきます。健診では、むし歯の有無や口内環境をしっかり見ていきます。
この時期は奥歯まで生え揃うころなので、かみ合わせの状態もチェックします。ちゃんと上下の歯でしっかりかめているか、上顎前突(じょうがくぜんとつ=出っ歯)や下顎前突(かがくぜんとつ=受け口)になっていないかなどを確認して、問題がある場合は歯科医院で診てもらうようすすめます。
舌の裏側にある筋(舌小帯=ぜつしょうたい)も確認します。3歳になると発音の発達が急激に進みますが、舌小帯が極端に短いお子さんはハッキリした発音ができない場合があります。問題がある場合は歯科医院で診てもらうようすすめます。
乳歯は永久歯と比べて歯質が弱く、むし歯になりやすい特徴があります。そのため、むし歯予防としてフッ素(フッ化物)の応用やシーラントが推奨されています。
フッ素の応用は、歯科医院で行う方法と、自宅で行う方法の2つがあります。
歯科医院では、高濃度のフッ素を3カ月に1回くらいのペースでフッ素塗布する方法があります。これによって歯質が強くなるだけでなく、むし歯になりかかった歯も再石灰化(酸で溶かされた歯の表面をもとに戻す)できます。
自宅では、低濃度のフッ素を配合した歯みがき剤やジェル、フッ素洗口剤などを使ってフッ素を歯に取り込むことができます。これらの商品は年齢に応じてフッ素の濃度や1回の使用量が決まっていて効果的な使い方がパッケージに記載されています。使用時は、注意事項をよく読んで使いましょう。
乳幼児期は、歯質が弱いだけでなく、授乳や食事の回数などのコントロールが難しい時期でもあります。歯科医院と自宅でフッ素を活用し、むし歯予防に努めましょう。
年齢 | 使用量 | フッ素濃度 | 注意したいこと |
---|---|---|---|
6カ月 (歯が生えてから)~2歳 | 切った爪程度 (少量) | 500~1,000ppm | 仕上げみがきの時に保護者が行う |
3歳~5歳 | 5㎜以下 | 500~1,000ppm | 寝る前が効果的。歯みがき後に5~10mlの水で1回だけすすぐ |
6歳~14歳 | 1㎝程度 | 1,000ppm | 寝る前が効果的。歯みがき後に10~15mlの水で1回だけすすぐ |
15歳以上 | 2㎝程度 | 1,000~1,500ppm | 同上 |
出典:日本口腔衛生学会 フッ化物応用委員会「フッ化物配合歯磨剤に関する日本口腔衛生学会の考え方」(表3 フッ化物配合歯磨剤の年齢別応用量とフッ化物イオン濃度)を一部改変
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【赤ちゃんの歯みがきに大切な「フッ素」に注目シーラントは、特別なフッ素入りの樹脂を使って、奥歯などの目には見えないみぞに汚れが入り込まないようにする予防法です。シーラントの対象の歯は、乳歯の奥歯と永久歯の奥歯になります。
乳歯の奥歯には、歯ブラシの毛よりも細くて深いみぞが多くあります。ブラッシングをしても、みがききれない部分がむし歯になりやすく注意が必要です。
シーラントは、こうした奥歯のみぞを物理的にふさぐことで、むし歯になるリスクを低くします。
ただし、シーラントの下にむし歯ができてしまうことや一部が欠けてしまい汚れがたまりやすくなるなどの理由で、むし歯になる可能性がゼロではないことを理解しておきましょう。
シーラントについては、歯科医によく相談をして検討してみてください。
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乳歯のむし歯(虫歯)を防ぐためにママが今日からできること(2)~歯ブラシ・歯みがき剤探し編~乳幼児を診察してくれるかどうか、フッ素塗布やシーラントを実施しているかなど、歯科医院によって異なりますので、事前に問い合わせて確認しましょう。
坂部 潤(小児歯科医、歯学博士)
日本小児歯科学会認定小児歯科専門医。東京・目黒、成城、麻布、代々木上原にある小児歯科専門医院キッズデンタルを開業。継続管理型の小児歯科専門医療を提供している。
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わたしの歯が生えてきたから、今度ママが歯医者さんに連れていってくれることになったの。歯医者さんって、どんなところなのかなあ。初めて行く場所ってなんだかこわいから、わたし、泣いちゃうかもしれないけど大丈夫?