乳歯入門
2歳半~6歳頃

【小児歯科医監修】子どもの口呼吸予防はどうしたらいいの?育てよう!口の機能

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ママは最近、ごはんのたびに「よーくカミカミしてからゴックンしてね」ってわたしに言うの。「よくかんで食べると消化にいいし、お口の筋肉が鍛えられるから、口呼吸の予防にもなるんだって」って、得意そうにパパに説明してる。カミカミゴックンって、すごく大事なことなんだね。

毎年11月8日は「いい歯の日」。赤ちゃんがずっといい歯で過ごせるように、3回にわたって乳幼児の歯と口の健康にまつわるお話を紹介しています。最終回は口呼吸予防をテーマに、授乳期・離乳期・幼児期の口の機能について、小児歯科医・歯学博士の坂部潤先生が解説します。

「いい歯の日」とは?

日本歯科医師会が1993年、「い(1)い(1)歯(8)」の語呂合わせで定めた記念日。例年、全国各地で啓発イベントやテレビCMの放映など、さまざまな歯科保健啓発活動が行われています。

口呼吸の原因と仕組み

歯並びや唇を閉じる力の弱さも原因になる

普段、何気なく遊んでいる時にお子さんの口がポカンと開いていること、ありませんか?
小児歯科では、「口呼吸が気になる」「いつもポカンと口を開けている」という理由で来院されるケースも比較的多くあります。

人は通常、鼻呼吸をしています。ところが、風邪やアレルギー性鼻炎などが原因で鼻がつまっていたり、歯並びやあごの形が原因で口が閉じにくかったり、口唇閉鎖力(唇を閉じる力)が弱いなどの理由で、口呼吸になってしまうことがあります。

口呼吸は口臭・むし歯にも関係する

通常、鼻で呼吸している時は、空気中に含まれているホコリや、ばい菌が鼻腔(びこう)というフィルターを通して除去され、クリーンな空気が肺に取りこまれます。

しかし口呼吸だと、汚れた空気が直接のどを通って気管に取りこまれてしまうので、風邪などのウイルスに感染しやすくなったり、アレルギーになりやすくなります。さらに口の中が乾燥するので、だ液の作用が弱まり、細菌が繁殖して口臭の原因になったり、むし歯や歯肉炎の原因にもなります。

また、口呼吸が習慣になると舌の位置が低くなり、前歯を押し出して歯並びに影響を及ぼしたり、口の周りの筋力が低下してぼんやりした表情になることがあります。

口呼吸を防ぐためにできること

気になる場合は耳鼻咽喉科や小児歯科へ

子どもの口呼吸は多くの場合、鼻や口に原因があります。単なる癖ではない場合がほとんどなので、「ちゃんと口を閉じなさい!」と注意するだけでは解決しません。

口呼吸にはいろいろな原因がからみ合っていることもあるため、少しでも気になったら耳鼻咽喉科、または小児歯科へ相談してみてください。根本的な問題は何かを探って、しっかりと対応することが大切です。

呼吸のしかたや姿勢にも注意が必要

口呼吸は、姿勢の悪さで起こることがあります。猫背で姿勢が悪い状態だと、肺への空気の通り道が狭くなり、浅く小刻みな口呼吸をする原因になります。また、口呼吸を続けることで、あごをつき出す前かがみの姿勢になりやすくなるという悪循環も引き起こします。

普段からお子さんに姿勢をよくする習慣をつけさせて、空気の通り道を広げ、深い腹式呼吸をしやすくすることが大切です。特に、食事の時には椅子の高さを調整して、お子さんがしっかり足を床につき、背筋をのばして食べられるようにします。

口を閉じる習慣をつけることも大切

口呼吸の原因の一つである「口唇閉鎖力(唇を閉じる力)」は、「赤ちゃんのときにしっかり乳首をくわえて吸えていたか」「離乳食の時期に唇を使う練習ができていたか」といったことなどが関係しています。

母乳やミルクを飲む時に「乳輪までしっかり深くとらえて飲めているか」、食事の時に「口を閉じてよくかんで食べているか」など、普段の生活でお子さんの様子を見ながら授乳時の赤ちゃんを抱く体勢を整えたり、食事の時に声をかけてお手本を見せてあげるなどサポートをして習慣をつけてあげるとよいでしょう。

覚えておきたい、子どもの口腔機能

成長段階に応じて正しい「食べ方」を身につける

口には「食べる(かむ、すりつぶす、飲みこむ)」「話す(発音、会話をしてコミュニケーションを取る)」「笑う」など、私たちが生活する上で大切な役割があります。乳幼児期はこれらの口腔(こうくう)機能の基礎をつくり、健全な発達を促す大切な時期です。

口呼吸や歯並びが悪くなることなどを防ぎ、よい口腔機能を身につけるには、特に食事の時に「口を閉じて」、「よくかんで食べる」習慣をつくることが大切です。

子どもの成長段階における口腔機能

発達段階によって変化するお子さんの口腔機能を知り、段階ごとに適したサポートをしていきましょう。

<授乳期>

  • ママのお腹の中にいた時の「哺乳のための反射」が備わっています。
  • まだ歯はなく、あごも小さく、口も狭い状態。おっぱいやミルクを飲むのに最適な形になっています。
  • この時期は、ママの乳首や哺乳瓶をしっかりくわえさせて授乳するようにします。

<離乳期>

  • 生後4~5ヶ月ごろになると、手指しゃぶりや、おもちゃをなめたりかんだりするなど口を使った遊びをして、だんだん離乳食を受け入れる準備をするようになります。
  • 個人差がありますが、生後6〜9ヶ月ごろに歯が生えはじめ、手指の機能も発達して、手づかみ食べなどを行うようになります。
  • 「飲みこむ」「押しつぶす」「すりつぶす」などの特徴的な動きができるようになります。月齢に応じたやわらかさの離乳食を与えるようにしましょう。

<幼児期(1~2歳)>

  • 奥歯が生えはじめるので、前歯でかみとり、奥歯ですりつぶすという「咀嚼(そしゃく)」ができるようになってきます。ただし、まだ一番奥の奥歯は生えていないため、咀嚼力は十分ではありません。
  • 少しずつ自立して食事を行うようになります。自分で食べ物を口に入れて、食べこぼしをしながらひと口の量の調節を覚えていく段階です。
  • まだかむ力が弱く、咀嚼力も弱いので、歯の生え具合を確認しながら、食べものが適切な固さになるように調理法を工夫します。

<幼児期(3~5歳)>

  • 乳歯が生えそろい、だんだん咀嚼力が高まってきます。
  • やわらかい食事だけでは口の周りの筋肉が鍛えられません。かみごたえのある食品を食事のメニューに取り入れていきます。
  • あごの発育などを考えて、意識して「よくかむ習慣」をつくっていくことが大切です。

【関連記事】

離乳食をこれから始めるママ必見!離乳食の役割とは 離乳食の進め方、ポイントを解説

「かむ力」「飲みこむ力」を幼少期から身につけておくことは、口の周りの筋肉を鍛えて口腔機能を発達させる上でも大切です。この動画では、口を動かす体操を通じて元気な口を育てられます。ぜひ親子で一緒にやってみてください。

かみかみゴクゴク体操特設サイト

https://www.lion-dent-health.or.jp/kamikami-gokugoku-taiso/

知っていますか?口腔機能発達不全症

普段の生活でお子さんがいつもポカンと口を開けている、口呼吸をしている、食べるのに時間がかかりすぎたり、早すぎたりする、話す言葉に歪みがあるなどの症状は子ども自身に自覚がなく、周りの大人もそのことに気づいていないことが多いです。

実はこれらの症状は口腔機能の発達が遅れていたり、正しく機能の獲得ができていないことが関係している場合があります。

18歳未満を対象として「口腔機能発達不全症」という病名で公的医療保険の対象になっています。

口腔機能発達不全症を判断するチェックリストを使用して、「食べる」「話す」「その他」の機能の中から、17項目ある症状を確認し、基準に該当していると診断された場合、歯科医院で指導を受けることができます。

個人差がありますが、2歳ごろまでは自然に治る可能性があるので様子を見ることもあります。乳歯が生えそろった3歳ごろを目安に、気になる口の周りの症状がある場合は小児歯科にご相談ください。

口呼吸は体にさまざまな影響を及ぼします。3歳ごろを目安に、食べ方や呼吸などで気になることがあったら、ぜひ耳鼻咽喉科か歯科医院を受診してみてください。

坂部 潤

坂部 潤(小児歯科医、歯学博士)

日本小児歯科学会認定小児歯科専門医。東京・目黒、成城、麻布、代々木上原にある小児歯科専門医院キッズデンタルを開業。継続管理型の小児歯科専門医療を提供している。

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