新生児・乳児期
生後6カ月~9カ月
「赤ちゃんが離乳食を食べてくれない…」という悩みを抱えるママやパパは多いようです。どうして赤ちゃんは食べないの?食べてもらうコツは?どんな調理法がいいの?といった疑問に、管理栄養士の上田先生がアドバイスします。
ゴックン期は、母乳・ミルクから離乳食へと移行する時期。まだ慣れていないので、食べてくれないこともよくあります。
離乳食を始めるのは、生後5カ月が経過してから。パパやママの食事の様子を見て、興味を示して目で追ったり、よだれを出したり、お口をモグモグさせていたら始め時です。
また、「寝返りが打てる」「おすわりができる(5秒以上一人で座れる)」という発達状態もチェックしてみてください。もし5カ月を過ぎてもできていないようなら、離乳食スタート前に一度かかりつけ医(小児科の先生)や、保健師に相談してみましょう。
離乳食のタイミングによっては、赤ちゃんが食べてくれないこともあります。母乳・ミルクを飲む少し前の時間に離乳食をあげるのが基本ですが、先に母乳・ミルクを飲んだ後だとおなかがいっぱいで、食べてくれません。逆におなかが空きすぎていても、大泣きして嫌がってしまうこともあります。
なお、海外の育児書には「母乳・ミルクを与える時間の合間にあげてください」と書いていることが多いのですが、その通りにするとあまりおなかが空いておらず、食べてくれないことも多々あります。離乳食をあげるタイミングを見直してみてください。
離乳食は、母乳やミルクとは感触も味も全然違います。離乳食を始めたばかりの頃は、「舌触りがざらざらしている」「味がイヤ」という理由で食べないこともあります。
トロトロになるまで裏ごししたり、離乳食に母乳やミルクを少し足したりして、いつも慣れている舌触りや味に近付けてあげましょう。なお、この時期は味付けをしなくても、米や野菜の素材の味だけで十分です。
「押し出し反射」とは、赤ちゃんが吸えないものが口の中に入ってきた時に、反射的に口の外に押し出してしまう現象です。5カ月くらいで離乳食を始めた時、この押し出し反射によって吐き出してしまうことがあります。
押し出し反射を防ぐためには、スプーンを赤ちゃんの口に入れすぎないこと。下唇に軽く乗せて上唇がおりてきたらスプーンを引きぬいて、食べ物をはさみとらせるのがポイントです。
モグモグ期は離乳食のいわば「中だるみ」の時期。口や味覚がだんだん発達してくるので、離乳食にも工夫が必要になります。
それまで順調に食べていたのに、ある時から急に食べなくなることがよくあります。口腔機能が発達してきて、舌もよく動くようになり、舌と上あごでつぶしながら食べるようになるので、今まで食べていたトロトロ状のものを嫌がったりします。
絹ごし豆腐のようなかたさになるように、調理方法を見直してみましょう。市販のベビーフードを試してみて、大きさやかたさを参考にするのもおすすめです。
味覚が発達するので、これまでの単調な味を嫌がって食べないことも。調味料は必要ありませんので、「お豆腐にさつまいもを和えて甘味を出す」「おかゆにお魚やしらす干しを入れて塩味をつける」「トマトやフルーツのすっぱさで酸味をつける」など、食材で味のバリエーションを増やしてあげましょう。
さまざまな味を知ることで、好き嫌いがはっきり出てくる時期です。ヨーグルト、チーズなどの乳製品をはじめ、赤身魚(カツオやまぐろ)、鶏ささみ、納豆、など幅広い食材を使えるようになる時期でもあるので、いろいろ試してみましょう。
前歯が生え始め、歯ぐきで食べ物をつぶす力がつき、いろいろなものを前歯で噛みちぎって食べたがる時期です。
カミカミ期は、モンキーバナナ状、またはミニハンバーグ状のかたさで、前歯でかじり取って歯ぐきでつぶしやすい食べ物が適しています。やわらかすぎたり、かたすぎると嫌がって食べてくれないこともあります。
いつも離乳食を残してしまう場合、食べないのではなく、量が多すぎるのかもしれません。育児の本などには赤ちゃんの離乳食の目安量が書いてありますが、目安量と「その子にとっての適量」は違います。無理に完食させようとすると、食べ過ぎてしまい将来的な肥満にもつながります。
手づかみ食べをしたがる時期なので、手に取って食べやすいものを用意すると食べる意欲を高めることができます。ミニハンバーグ状のお肉や、ゆでにんじんの輪切り、ロールパンの輪切りトーストなどがおすすめです。
赤ちゃんは手づかみで食べることで、自分の「一口量」(口の中で食べ物をつぶして、飲み込むことができる量)を学習していきます。大人と同じように満腹になると、自分の手で食べなくなるので、その時は無理に食べさせる必要はありません。食べる適量を赤ちゃん自身が学べるように、手づかみ食べの意欲を育ててあげましょう。
「離乳食を食べない…」と不安になっても、赤ちゃんが次の2点を満たしていれば心配はいりません。
月齢ごとに体重をチェックしてみましょう。母子手帳に載っている発育曲線の身長と体重のバランスを見て、成長曲線に沿って順調に体重が増えていれば多少食べなくても問題ありません。体重が成長曲線に沿って増えていなかったり減っている場合は、何かしらの問題があるので、小児科の先生や保健師さんに相談しましょう。
5カ月から6カ月頃の赤ちゃんは離乳食の割合が10%~20%、9カ月では60%程度と、徐々に離乳食からのエネルギーや栄養素の割合が高くなるのが一般的です。9カ月になったら3回食にして、離乳食からしっかり栄養を取れるようになることが大切です。
ただ、食べない日があっても、それほど気にしなくても大丈夫です。「朝食べ過ぎたから昼は食べない」「3日間あまり食べなかったけど、4日目によく食べた」ということもよくあります。1週間単位で赤ちゃんの食べ方の様子を観察しましょう。体重が順調に増えてよく眠り、機嫌がよければまず問題ありません。
離乳食を食べないと心配するママやパパは多いですが、母乳やミルクをまだ飲んでいる時期なので、急に栄養失調になったりする心配はありません。少し長い目で見守ってください。
上田 玲子(栄養学博士、管理栄養士)
白梅学園大学・短期大学非常勤講師。(株)トランスコウプ総研取締役。日本栄養改善学会評議員、日本小児栄養研究会運営委員。著書に『人生で一番大事な最初の1000日の食事』など。
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なんだか今日はごはんを食べたくない気分だったから、一口くらいしか食べなかったの。そしたら、ママがすごく落ち込んじゃった。「このまま食べてくれなかったらどうしよう…」って、真剣な顔でパパと相談してる。ママ、大丈夫。いまは食べたくないだけだよ!