乳歯入門
2歳半〜6歳頃
5~6歳のころに、初めて乳歯が抜けて歯の生えかわりが始まります。この時期はむし歯のリスクが高まるだけでなく、歯並びやかみ合わせのトラブルも生じやすくなるため、定期的に歯科医院で診てもらうと安心です。小児歯科医・歯学博士、坂部潤先生にこの時期に大切な「予防歯科」という考え方について話を聞きました。
5歳半~6歳ごろになると乳歯から永久歯への生えかわりがスタートして、12歳ころには永久歯に生えかわります。口の中がどんどん変化してくる時期だからこそ、ママやパパにとっては「うちの子の歯並びは大丈夫?」「生えかわりが心配…」などといった疑問や悩みを持つ方も少なくありません。
実際にこの時期の子どもは、口のトラブルが多くなります。
生活習慣の変化によりむし歯が増えたり、永久歯の生えかわりがスムーズにいかなかったり、歯並びやかみ合わせの問題が表面化しやすかったりと、口のトラブルが多くなる時期でもあります。また、口呼吸や指しゃぶり、口をぽかんと開けていたりする「くせ」や、発音、ものの食べ方が歯並びに影響しやすい時期でもあります。
だからこそ、定期的に口の中の状態を正しく把握することが大切です。むし歯や歯並び、かみ合わせの問題を事前に防いで早めの対処を心がけましょう。
むし歯などになってからの治療ではなく、なる前の予防を大切にし、歯と口の健康を積極的に守る「予防歯科」という考え方があります。子どもの口の健康を守るためにも、ご自宅で行うセルフケアに加えて、普段からぜひ歯科医院を活用して、予防に努めてほしいと思います。
子どもの歯が生えかわる時期に、歯科医師に診てもらえることは主に3つあります。
歯が生えかわる時期の口の中には様々なトラブルが起こります。特に歯の生えかわりについては、生えてくる途中で他の歯に引っかかったり、乳歯がまだ抜けないうちに横から永久歯が生えてくることがあります。
場合によっては乳歯を抜歯するなどの処置が必要なケースもありますが、おうちの人が判断するのは難しいです。歯科医院では生えかわりや歯並びについても問題ないかチェックをしてくれます。
さらに、レントゲン写真を撮影すると永久歯が骨の中でしっかり育っているかなどを調べることもできます(状況により保険適用外になります)。
心配な場合は、歯科医師に相談してみてください。
生えかわりの時期は、口の中の変化や、生活習慣の影響によりむし歯になりやすい時期でもあります。
特に、5~6歳になると、奥歯に新たな永久歯の「第一大臼歯」が生えてきます。この第一大臼歯は歯の溝が複雑で他の歯に比べて背が低い期間があるため、汚れが残りやすく、生えている途中でむし歯になってしまうこともあります。むし歯かどうかは保護者の方ではわかりにくい場合もあるため、プロの眼でむし歯になっていないかの確認をしてもらいましょう。
5~6歳はだんだん手先が器用になってくる時期なので、歯科医院では子ども自身が上手にみがけるようにブラッシングのやり方を教えています。
他にも歯ブラシの選び方や持ち方、安全なみがき方などもアドバイスしています。
また、子どもが自分でしっかりみがけるようになるまでは、ママ、パパへの仕上げみがきのアドバイスも引き続き行います。(日本小児科学会では8歳くらいまでの仕上げみがきを推奨しています)
子どもがみがき残す場所は、親がみがきにくいところでもあります。
歯科医院で定期的に、細かいところまでしっかり汚れを落とせているかチェックをしてもらうことをおすすめします。
歯科医院で受けられる代表的なケアは、クリーニング、フッ素、シーラントがあります。
クリーニングは、歯科医院専用の器具で歯をきれいにする方法です。歯ブラシで落としきれない汚れを落とし、歯の表面をなめらかにすることができます。
フッ素は、表面に塗布することで歯を強くします。
特に生えてきたばかりの永久歯は「幼弱(ようじゃく)永久歯」といって歯質がやわらかく、生えてから2~3年はむし歯になりやすい期間です。この間にフッ素を塗布すればむし歯の予防効果が高くなります。塗布はだいたい3~4カ月に1回のペースで行います。
シーラントは、歯ブラシの毛が行き届かないような歯の溝を樹脂で埋めて、汚れがたまらないようにする処置です。樹脂からはフッ素が染み出るので、歯質を丈夫にしてくれる効果もあります。
ただし、一部が欠けてしまうことやシーラントの下にむし歯ができてしまうなどの可能性もあるため、定期的な歯科医院での確認をおすすめします。
早いうちから定期的な歯科健診を受けることは、「むし歯」と「口の機能」という2つの観点から見ても将来の健康につながるといえます。
一度むし歯になって治療した歯は見た目は綺麗になりますが、元通りになるわけではありません。一度治療した歯はまたむし歯になるリスクが高くなるため、何度も治療が必要になり、最後は抜くことになる場合もあります。そのため、幼少期から歯科医院に通って治療する必要のない歯を保っていくことが大切です。
また、近年ではむし歯以外にも、子どもの口呼吸や発音などが気になるというママやパパも増えてきました。歯科医院に定期的に通って、歯並びやかみ合わせ、口の機能を小さいころからしっかり診てもらうことで、必要な時期に速やかに必要な治療が始められます。
歯と口は食べたり笑ったり話したり、毎日の生活を豊かにし、健康な身体の土台となる大切なものです。家族みんなで定期的に歯科健診を受けることをおすすめします。
坂部 潤(小児歯科医、歯学博士)
日本小児歯科学会認定小児歯科専門医。東京・目黒、成城、麻布、代々木上原にある小児歯科専門医院キッズデンタルを開業。継続管理型の小児歯科専門医療を提供している。
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5~6歳ごろからだんだん子どもの乳歯が抜け始め、永久歯に生えかわっていきます。生えかわりの時期の乳歯はグラグラして安定しなかったり、仕上げみがきに一苦労だったりと、子どもも親も何かと大変です。この時期におさえておきたいポイントを、小児歯科医・歯学博士の坂部潤先生が教えてくれました!
「乳歯がまだ生えてこない…」「本数が少ないかも?」「この歯の生え方って大丈夫なの?」など、乳幼児の親にとって歯の悩みは尽きないもの。ここでは、ママやパパから多く寄せられる乳歯の質問や疑問について、小児歯科医・歯学博士の坂部潤先生が回答します。