乳歯入門
生後〜2歳半頃
『乳歯のむし歯を防ぐために今日からできること』シリーズの第3回目は、歯科健診がテーマです。1歳から2歳までの間は、子どもがもっともむし歯になりやすい時期。
ママが心配する「乳歯のむし歯ってどんなもの?」「知らないうちにむし歯ができてしまったらどうすればいい?」「歯医者さんとの上手な付き合い方は?」といった質問を小児歯科医・歯学博士の坂部潤先生がズバリ回答します!
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乳歯のむし歯を防ぐためにママが今日からできること(1)~イヤイヤ期の歯みがき編~ 乳歯のむし歯を防ぐためにママが今日からできること(2)~歯ブラシ・歯みがき剤探し編~坂部 潤(小児歯科医、歯学博士)
日本小児歯科学会認定小児歯科専門医。東京・目黒、成城、麻布、代々木上原にある小児歯科専門医院キッズデンタルを開業。継続管理型の小児歯科専門医療を提供している。
歯科健診って、いつごろから行き始めたほうがいいんでしょうか?
坂部先生
歯が生え始めたころ(6~9カ月頃)から、むし歯にならないためのアドバイスを教えてもらいに行くと安心ですよ。理想的な目安はだいたい3~4カ月に1回のペースですね。
ギクッ。うちの子、2歳だけどまだ行ってません……。なんとなく、まだ早いかな~と思っちゃってました。
坂部先生
早い時期からむし歯があるかどうか見てもらうだけでなく、ご家庭での歯と口のケアが適切か確認してもらうつもりで歯科医院へ行かれてはいかがでしょう。
小児歯科って、普通の歯医者さんとどう違うんですか?
赤ちゃんや、お子さんをみる体制が整っているのが小児歯科です。手早く診察ができるように介助スタッフを多くしていることや、泣き声が響いても大丈夫なように診察は個室で行うなど、対応を工夫しているところが多いですね。
私のところでは、赤ちゃんはお母さんと一緒に椅子に座ってもらって、私のひざの上にごろんと横になるようにして診察をしています。こうすればお母さんの顔が見えて、安心してもらえるんですよ。
うちの息子、今ちょうどイヤイヤ期なんです。連れて行ったら、絶対に暴れたり泣き叫んだりするだろうな~……。
坂部先生
小さなお子さんはどうしても泣いてしまうものです。スタッフも慣れていますから大丈夫ですよ。激しく動いたりしてもスピーディに安全に診察するために、体を固定するネットや、口を閉じないようにする器具を用意しているところもあります。
歯医者さんに行く前に、準備しておくことってありますか?
坂部先生
お子さんにとって、歯医者さんは未知の場所です。緊張しすぎたり、大泣きしたり暴れたりすることを想定すると、直前にごはんを食べていたら吐いてしまうかもしれないので、受診前の飲食はひかえたほうがいいでしょう。
それと、汗をかきすぎると脱水症状になることもあるので、温度調整しやすい格好がいいですね。
心配な場合、予約を取る際など事前にかかりつけの歯科医院に確認しておくと安心ですね。
親子ともに動きやすい格好が一番ですね!了解です!
乳歯って、いずれ抜けちゃいますよね。むし歯になったら、治療はしたほうがいいんですか?
坂部先生
乳歯のむし歯もきちんと治療が必要です。いずれ永久歯に生え変わるからといって乳歯のむし歯を放置すると、その後に生えてくる永久歯の歯の質や歯並びに悪い影響を及ぼします。また、5歳頃から永久歯が生えてきて永久歯が生えそろうまでは、口の中で乳歯と永久歯が混在する時期が続きます。むし歯の乳歯をそのままにしていると、口の中の環境はどんどん悪くなってしまい永久歯までむし歯になりやすくなるんです。
ひえ~。それは治療しておいたほうがいいですね。
坂部先生
そうですね。「どうせ抜けるから」と放置せず、病気のひとつとして、ちゃんと治さないといけません。
むし歯って、外から見て分かるものなんですか?こないだ歯みがきの時に息子の口の中を見て「あっ、むし歯!」ってドキッとしたら、ゴマのかけらが歯についていただけでした……。
坂部先生
子どものむし歯は、だいぶ進行しないと分からないことが多く、外から見ただけで見分けるのは難しい場合もあります。特に「歯と歯の間」や、「奥歯の咬み合わせの溝の奥」にできたむし歯は、私たち歯科医が外から見てもなかなか分かりません。
デンタルフロスでチェックしたり、レントゲンを撮ったり、歯科医院によってはレーザーでむし歯かどうか調べる機械を用いているところもあります。定期的に歯科医院を受診するといいですね。
子どもがむし歯を痛がってから気づくんじゃ、遅いですもんね。
坂部先生
実は、子どものむし歯はあまり痛くない上に、進行が早いのが特徴です。歯の痛みというものは、歯の神経の圧力が高まることで起こるのですが、乳歯は歯質がやわらかいので圧力が高まりづらいんです。
まったく痛くなかったけれど気がついたら歯がボロボロになっていたということもよくあります。
ええ~!怖い〜!
坂部先生
とはいえ、1日で歯に穴が開くわけではないので、3~4カ月ごとに定期健診でちゃんとチェックしてもらっていれば、万が一むし歯になっても早期発見ができて進行をおさえることができますよ。
むし歯になるリスクが高い子って、いるんですか?
坂部先生
お口の中の状況や生活習慣で、むし歯のリスクが高いお子さんはいます。もともと唾液の量が少なかったり、だらだらお菓子を食べていたり、歯をみがかなかったりすることが習慣になっているとむし歯のリスクが高くなります。
また、形成不全といって生まれつき歯質が弱かったり、歯のみぞが深くて汚れがたまりやすいお子さんは、むし歯になりやすい傾向があります。ただ、そんなに多くはないですね。
むし歯になりやすい食べものって何ですか?子どもが欲しがるのが、砂糖たっぷりのお菓子ばかりなので困っています。
坂部先生
むし歯になるかどうかは、砂糖の摂取量よりも、お口の中に砂糖がどれだけ長く滞在しているかによります。
たとえば、ケーキ1個とアメ10個に同じ10グラムのお砂糖が含まれているとして、ケーキを一度に食べるより、アメを10回に分けてこまめに食べるほうがはるかにむし歯のリスクが高いんです。
へえ~!知らなかった!
坂部先生
お菓子をあげる時間を決めて、食後はちゃんと歯みがきをすることが大切です。
それをふまえて、むし歯になりやすいものを挙げると、スポーツドリンクやジュースは大量の砂糖が入っているので、ダラダラと飲まないようにすることが大事です。ソフトキャンディやキャラメル、チョコレートなど歯にくっつきやすいお菓子も、なるべくなら控えたほうがいいかもしれませんね。
※治療の開始時期の目安や方法は一例を紹介しています。お子さんの状況により、異なる場合がありますので、気になる方はかかりつけの歯科医院でご相談ください。
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子どもに甘いものをそれほど飲み食いさせている意識はなくても、気づかないうちに糖質を過剰に摂取していてむし歯になるケースは非常に多いものです。
生まれてすぐの赤ちゃんの口の中にはむし歯の原因になるミュータンス菌はいませんが、歯が生えてきたら次第に増えていきます。
ミュータンス菌をなるべくうつさないように、口うつしをしない、食器を分ける、キスをしないというのは理に適っていますが、むし歯のリスクを減らすためには、「間食習慣」や「歯みがき習慣」など生活習慣に気を配ってあげることが大切なんです。
ミュータンス菌をうつさないことに神経をとがらせるよりも、日々の生活習慣を家族みんなで整えていただけるといいですね。
日本小児歯科学会が認定している「小児歯科専門医」なら、お子さんの歯をしっかりみてもらえます。ただ、全国にある歯医者さんの中で小児歯科の専門医はそれほど多くはありません。
一般的な歯医者さんの中でも、幼少期からの歯の予防に力を入れているところや、赤ちゃん・子ども歓迎なところもたくさんあります。インターネットのホームページの情報やご近所の口コミなどを参考に、かかりつけ候補をいくつか見つけておき、早めに受診してみて「ここだ!」という相性の良いところを決めましょう。
こないだ、ママとパパが「お口の中をアーンって見てもらいにいこう!」って言って、わたしを歯医者さんに連れていったの。初めて行くところだし、こわくて「イヤー!」って大泣きしたら、ママは「すぐ終わるからね!」ってあわててた。終わったあとでみんなに「がんばったね!」ってたくさんほめられたけど、疲れちゃったなあ。