乳歯入門
2歳半~6歳頃
歯と歯の間の歯垢(プラーク)は、歯ブラシによるブラッシングだけでは、6割程度しか取りのぞけません。そのため、歯と歯の間の歯垢を取りのぞけるデンタルフロスは、子どものむし歯予防にも必須のアイテムです。
今回は小児歯科医・歯学博士の坂部潤先生に、大人と子どもを対象にしたデンタルフロスの使い方や注意点をうかがいました。
デンタルフロスは、合成繊維などを束ねて作った細い糸状のものです。汚れが残りやすい歯と歯の間にデンタルフロスの糸が入り込み、歯垢を取りのぞくことができます。デンタルフロスで歯垢を取りのぞくことは、むし歯や歯周病予防にも繋がり、歯が生えそろってきた子どもにも保護者が仕上げみがきの時に使うことができます。
「デンタルフロスが良いとは聞くけど、よく分からない。」という人に、デンタルフロスを使うメリットを3つ紹介します。
デンタルフロスを使うと、歯と歯の間にある歯垢を取りのぞくことができます。むし歯ができやすい場所は、主に「奥歯のかむ面の溝」や、「歯と歯の間」です。
奥歯のかむ面の溝は歯ブラシできれいに汚れを落とすことができますが、歯と歯の間の汚れは歯ブラシの毛先が届きにくいため、きちんと取りのぞくことができません。歯ブラシとあわせてデンタルフロスを使うことで、9割近くの歯垢を除去できるといわれています。
むし歯や歯周病の原因は歯垢です。
デンタルフロスで歯と歯の間の歯垢を取りのぞくことは、むし歯や歯周病の予防に繋がります。
特に、歯と歯の間にできてしまったむし歯は、大きくなるまで外からは見えにくいものです。目視のみの健診などで歯の表面にむし歯が見つからなくてもレントゲンで見てみると、実は歯と歯の間に小さなむし歯ができているケースも珍しくありません。
むし歯を発見して初めてデンタルフロスの必要性に気付く患者さんも大勢おられます。
日々のデンタルフロスを心がけて、むし歯や歯周病を予防することが大切です。
子どもの歯と歯の間のむし歯は、乳歯が生えそろってきて、歯と歯の間が狭くなってくる2歳ごろから増え始めます。乳歯のむし歯は痛みを感じにくく、発見しづらいもの。毎日のフロスケアで歯垢を取りのぞき、むし歯の発生を防ぎましょう。
日本人のデンタルフロスや歯間ブラシの使用率は39.2%。1~4歳の幼児だとわずか15.4%です(厚生労働省「平成28年 歯科疾患実態調査」より)。
欧米では多くの人が歯ブラシとデンタルフロスをセットで使っていますが、残念ながら日本ではまだ欧米ほど普及していないのが現状です。
薬局やドラッグストアでは、さまざまな種類のデンタルフロスが並んでいるので、下記の内容を参考にご自身やお子さんに合ったものを選んでみてください。
デンタルフロスには、自分で必要な長さの糸を切り取って使う「糸まきタイプ」と、ハンドル(持ち手)がついている「ホルダータイプ」があります。
糸まきタイプは両手の指で糸を操作するので、力加減や動きを細かく調整して使うことができます。
ホルダーに糸が取り付けられているホルダータイプは片手で操作ができて使いやすいので、子どもに使う時や初めて使う人などにおすすめです。
デンタルフロスは、製品によって糸の太さや強度が違うため、パッケージをよく確認しましょう。使い捨てタイプと、洗ってくり返し使えるタイプがあります。
くり返し使えるタイプはある程度の強度があるので、歯ブラシと同じように洗ってくり返し使うことができます。糸が毛羽立ってきたり、歯にひっかかりやすくなったりしたら交換しましょう。
子どもがデンタルフロスを使う目安は、歯と歯の間が狭くなってくる2歳ごろからです。歯みがきに慣れてきたら、仕上げみがきの時に使ってみてください。
子どもの歯並びの状態を見て、歯と歯の間のすき間が狭いところをデンタルフロスできれいにしましょう。
ホルダータイプのデンタルフロスなら、ママやパパが利き手でデンタルフロスを持って、反対の手で子どもの口やあごを支えて開き、使うことができます。毛が細くてヘッドが小さい子ども用の製品もあるので、使いやすいものを選んでください。
デンタルフロスは細かい動きが必要なため、手元が安定していないと歯ぐきを傷つけてしまう可能性もあるので、小さな子どもには必ず大人が使うようにします。
小学校4、5年生くらいになり、安定して操作できるようになったら自分で使い始めてもよいでしょう。最初は親がそばで見守り、操作できているかを確認してあげるようにします。
デンタルフロスは、よく「歯間(しかん)ブラシ」と混同されやすいので注意しましょう。歯間ブラシは歯ぐきが下がってきたところや、歯と歯の間の根元に三角形のすき間があるところなど、歯と歯の間のすき間が広いところに使う用具です。
歯と歯の間のすき間が広いところは、歯間ブラシを使うことで効率よく汚れを取りのぞくことができますが、 大人でも歯と歯の間のすき間が狭いところや、子どもの歯と歯の間のすき間がないところに歯間ブラシを使ってしまうと、歯ぐきを傷つけてしまうので使わないようにしましょう。
ここでは、ホルダータイプのデンタルフロスの使い方について説明します。
まずは歯と歯の間にデンタルフロスの糸を当てます。
次に、ゆっくりと小さく、前歯の場合は前後に、奥歯の場合は左右にノコギリを引くように動かしながら、歯と歯の間に入れていきます。
なお、歯と歯がぴったり接している部分(コンタクトポイント)は、通過する時に少々きつい感じがしますが、ゆっくりと小さく操作することで入っていきます。ここで勢いにまかせて入れてしまうと、下の歯ぐきに突き刺さって傷つけてしまうことがあるので注意しましょう。
中まで入ったら、まずは歯の片側の面に糸をギュっと沿わせて押し付けて下から上に動かし、同じように反対側の面も下から上に動かして歯垢を除去していきます。
取り出す時も入れた時と同じように、ノコギリを引くように動かしながら取り出します。糸の部分に歯垢がついてくるので、水でよく洗いましょう。
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デンタルフロスの使い方子どもに行う場合は、歯ブラシの仕上げみがきの時と同じように頭がふらつかないように固定をして、デンタルフロスを使うようにします。
もしママやパパがデンタルフロスに慣れていなかったら、まずはご自身が使ってみて、慣れてからお子さんに使ってみてください。上手く使えない場合は、歯科医院で使い方を確認することができるので、ぜひご相談ください。
できれば毎日、デンタルフロスの日を設けるとよいです。むずかしい場合は、最初は1週間に2回程度から始めて、少しずつ回数を増やし、デンタルフロスの習慣をつけていきましょう。
時間帯は、特に寝る前の仕上げみがきの時に行うのがおすすめです。睡眠中は、だ液の分泌量が減り、口内に細菌が増えやすくなるため、しっかり歯垢を落とすようにしましょう。
力任せに勢いよくデンタルフロスを入れたり、誤った使い方をすると歯ぐきを傷つけてしまうので注意しましょう。ただし、歯ぐきが歯肉炎になっていると、デンタルフロスを正しく使っていても歯ぐきから出血することがあります。
このような場合は、口内の歯垢をしっかり落とすことによって、歯ぐきが引きしまって健康な歯ぐきに戻ると、出血もしなくなります。デンタルフロスの使い方や歯ぐきが気になる場合は、歯科医院へ相談しましょう。
お子さんの歯が生えそろってきて、歯と歯の間のすき間が狭くなってきたら、デンタルフロスを使い始めるとよいでしょう。歯と歯の間の汚れをしっかり落として、むし歯を予防しましょう。
坂部 潤(小児歯科医、歯学博士)
日本小児歯科学会認定小児歯科専門医。東京・目黒、成城、麻布、代々木上原にある小児歯科専門医院キッズデンタルを開業。継続管理型の小児歯科専門医療を提供している。
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ママとパパはわたしの歯みがきの時に、歯ブラシだけじゃなくて「デンタルフロス」っていう用具を使うようになったの。歯ブラシだけだと歯と歯の間の汚れがしっかり落ちないから使ったほうがいいんだって。この糸みたいなもので、ほんとうに汚れが取れるのかなあ。