【小児歯科医が解説】乳歯の本数は？永久歯の生え変わりはいつ？
乳歯についてよくある質問まとめ

坂部先生
乳歯は全部で20本あり、目安としては2歳半くらいまでに生え揃います。ただ、前後半年くらいは誤差範囲なので、例えば3歳の誕生日までに20本全て生え揃っていなくても問題ありません。

ただし、4歳の誕生日までに20本全て揃っていない場合は、「生まれつき歯の数が少ない（先天性欠如）」「隣の乳歯にくっついてしまってなかなか生えてこない（癒合歯）など、何かしらの問題がある可能性があります。ぜひ小児歯科を受診してみてください。

坂部先生
生後6カ月ごろから、まずは下の前歯（乳中切歯）2本が生え始めます。その後、1歳半ごろまでに上の前歯2本と上下前歯の横の歯（乳側切歯）4本が生えます。1歳半を過ぎると奥歯（乳犬歯と第一乳臼歯）が生え、計16本になります。

最後に第二乳臼歯が生え始め、2歳半くらいまでに計20本の歯が生え揃います。

坂部先生
個人差はありますが、男女で大きな違いはありません。
表に「乳歯が生える時期の目安」を示しました。目安として参考にしてください。

坂部先生
1歳半から3歳くらいまでの間は、周りの大人からむし歯菌がうつりやすい時期といわれています（感染の窓）。 むし歯菌は家族が使ったスプーンなどで食べ物をあげるなど、唾液を介してうつる場合が多いですが、神経質になる必要はありません。安心してコミュニケーションを取れるよう、お子さんとともに家族の口の中も清潔に保つようにしましょう。

坂部先生
生まれた時から生えている乳歯を「先天性歯（せんてんせいし）」といい、下の前歯に多いのが特徴です。

先天性歯は、もともと歯のつくりが弱いことが多く、永久歯が生えてくる前に自然と抜けてしまうことがあります。母乳を飲む時にお母さんが痛がったりするので、先を丸く削ることもあります。定期健診で診てもらうようにしましょう。

坂部先生
はい。乳歯は永久歯に比べて歯質がやわらかいので、むし歯になりやすいのが特徴です。さらに、乳歯はサイズが小さい分だけエナメル質や象牙質の層が薄く、むし歯になると深く進行しやすくなります。

また、歯質がやわらかい乳歯は、むし歯が進行しても歯の中の神経への圧力が高まりにくいため、痛くなりにくいという特徴があります。気が付かないうちにむし歯がかなり進行していたケースもありますので、2～3カ月に1回は歯科医院で健診を受けたほうがいいでしょう。

坂部先生
生えてきた乳歯の一部に、極端に白い斑点や模様がついているのは、エナメル質の形成不全の一種で「ホワイトスポット」といいます。色が違うだけなら、特に問題ありません。ただ、形がへこんでいたり、ざらざらしていて汚れがつきやすい場合は、むし歯になりやすいので歯科医に相談してください。

坂部先生
生まれつきの歯の形態異常の一つです。もともとは独立している2本の歯の芽が、何らかの原因でくっついて、1つの歯のようになって生えてきたものです。

癒合歯は、乳歯の下の前歯によく発生します。2本が1本のかたまりのように合体していたり、一見普通の歯並びだけれど、よく見ると根元で2本の歯がくっついている歯もあります。

癒合歯の原因ははっきりしていません。乳歯が抜けて生えてくる永久歯も、同じ癒合歯であったり、歯の数が足りなかったりと何らかの異常があるケースも見受けられます。そのため、定期健診で診てもらうようにしましょう。

癒合歯は「もう片方の乳歯がなかなか抜けない」など、永久歯への生え変わりがスムーズにいかないことがあります。子どもが痛がっていたり、不快さを訴えるようであれば、歯科医に相談してください。

坂部先生
抜歯が必要なケースもあります。おうちの人が判断するのは難しいので、歯科医院で相談してみてください。

「乳歯が抜けないうちに、次の永久歯が横から生えてきてしまった」「反対側にある同じ種類の乳歯はとっくに抜けて半年以上前に永久歯が生えてきたのに、その乳歯はびくともしない」といった場合は、歯科的に問題があるので、麻酔をして抜かなければいけないことがあります。

また、「なかなか抜けない乳歯がグラグラして痛い、食事がとりづらい」「抜けそうで抜けない乳歯に気を取られて、他のことに集中できない」など、生活に支障がある場合も抜歯することがあります。

坂部先生
自然に抜け落ちる乳歯なら、問題はありません。乳歯が抜けたらすぐに永久歯が生えてきて、3カ月以内にはちゃんと機能し始めます。

ただ、物にぶつかったり、むし歯が悪くなったりして早めに抜くことになった乳歯は、次の永久歯が生えてくるまでに半年以上かかることがあります。そうするとものの食べ方や話し方にくせが出たり、永久歯の生え方に影響を及ぼしたりするので、「保隙（ほげき）装置」という入れ歯のようなものを入れて、しばらく様子を見ることがあります。

坂部先生
飲み込んだ乳歯は、そのまま体内を経由して便の中に出てくるので問題ありません。気管支に入ってしまったり、おなかのひだに引っかかったりすることも理論上は全くないとは言えないですが、きわめてまれです。

坂部先生
形と大きさ、歯質が違います。乳歯から永久歯に生え変わると1.5倍くらいの大きさになり、それまで間隔が空いていてスカスカだった歯並びが整ってきます。

また、乳歯はやわらかく白いのですが、永久歯はかたく、若干黄色がかっているのが特徴です。永久歯が生えてくると「色が黄色くて心配です」というお母さんも多いのですが、他の乳歯との比較でそう感じるだけで、問題はありません。

なお、生え始めの永久歯は歯質が未成熟で、2年くらいかけて唾液の中のカルシウムなどを吸収して、だんだんしっかりした歯質になっていきます。

坂部先生
6歳臼歯とは、永久歯の奥歯（第一大臼歯）のことです。乳歯が20本全部生え揃ってから、その後ろに上下左右、計4本生えてきます。個人差はありますが、その名の通り6歳くらいが生える目安の時期です。

奥まった位置なので、生えてきたことに気付かないことも多くあります。生えている最中は、他の歯とは高さが違うので普通にみがいているとなかなか歯ブラシが当たりません。斜めに歯ブラシを入れて、その歯だけをピンポイントでみがくのがコツです。

ちなみに6歳は、おうちの人が仕上げみがきをやめてしまうことも多く、むし歯になりやすい時期でもあります。6歳臼歯も含めて、全ての歯をしっかりブラッシングしてあげてください。

坂部先生
5歳半～12歳ころで全て生え変わります。

生え変わりの時期と順番はだいたい決まっています。まずは5歳半ころから、下の前歯2本（中切歯）が生え変わります。次に、その横の歯2本（側切歯）と上の前歯2本が生え変わり、さらに新しい永久歯が生えてきます。

5歳半から8歳くらいで一段落して、1年半～2年たったころに、残りの歯が全部生え変わります。全ての乳歯がなくなって永久歯に生え変わるのは10～12歳ころになります。

坂部先生
先天性欠如は、生まれながら歯の数が足りないことをいいます。下の前歯に起こりやすく、確率としては50人～100人に1人です。乳歯が抜けたけれど、なかなか永久歯が生えてこないのでレントゲンを撮ってみたら発覚することがあります。

乳歯に2つの歯がくっついて生えてくる「癒合歯（ゆごうし）」がある場合は、永久歯で先天性欠如になる可能性が高くなります。心配であれば、生え変わりが始まる5～6歳ころに「レントゲン写真」を撮ると、先天性欠如がないかどうか、位置がおかしくないかなどを確認できます。

坂部先生
乳歯や永久歯への生え変わりは、おうちの人からの相談がとても多いです。少しでも心配なことがあれば、お気軽に小児歯科を受診してください。