むし歯
むし歯とは
むし歯とは、口の中に住みついている細菌が食べ物や飲み物に含まれる糖質をエサ(代謝)にして作られる「酸」によって歯が溶かされ、穴が空いてしまう疾患です。
むし歯の原因
むし歯は酸を作る「細菌(主にミュータンス菌)」、「酸にとけやすい歯の質(酸への抵抗力)」、細菌のエサとなる「糖質(主に砂糖)」の3つの好ましくない条件が重なり、時間が経過することで発生します。
むし歯の進行
むし歯の主な原因菌であるミュータンス菌は、糖質(主に砂糖)をエサにしてネバネバした水に溶けにくい「グルカン」という物質をつくり、歯の表面に付着します。このグルカンは粘着性が強いので、多くの細菌がくっつき合い大きな塊に成長していきます。これがプラーク(歯垢)です。また、プラーク中でミュータンス菌は、砂糖を分解(代謝)して「酸」を作ります。この酸によって、歯の表面のカルシウムが溶け出し(脱灰)、やがてむし歯ができます。
生まれたばかりの赤ちゃんの口には存在しない、ミュータンス菌と呼ばれるむし歯の原因菌が保護者の口からお子さんの口に感染
ミュータンス菌が、おやつやジュースなどに含まれている砂糖をエサにして
ネバネバしたグルカンをつくり、歯についてプラークになります。
プラーク中の細菌が増殖しミュータンス菌が、さらに糖分をエサにして、酸をつくります。
酸によってエナメル質の表面からカルシウムやリンが溶け出し、進行していきます。
歯に穴があく(むし歯)
むし歯の症状
むし歯の進行の程度や発生する場所によって、症状に違いがあります。
むし歯が歯と歯の間や奥歯のかみ合わせの溝などのエナメル質にできる場合は、エナメル質のミネラル成分が溶け始め(脱灰)ます(C0:初期むし歯)。そのままにしていると徐々に脱灰が進行し、エナメル質に穴が開き(C1)、象牙質まで進むと冷たい飲食物がしみるようになります(C2)。さらに進行し歯髄神経まで達すると激しい痛みを生じます(C3)。歯髄が死んでしまうと痛みを感じなくなる場合がありますが、中で膿がたまることによって激しい痛みが出る場合があります(C4)。
また、大人になると歯根にむし歯(歯根むし歯)ができます。
歯周病や加齢によって歯肉が下がると、エナメル質で覆われていないセメント質や象牙質が露出してきます。セメント質や象牙質はエナメル質よりもやわらかく酸に溶けやすいため、簡単にむし歯になります。歯の根の部分にプラークが付着した状態でいるとむし歯のリスクはさらに高くなります。
軽度のむし歯や歯根むし歯の場合、ほとんど痛みを感じないことがあります。痛くなくても、歯科医院で定期的にむし歯になっていないか確認することが大切です。
CO(Questionable Caries for Observation シー・オー:初期むし歯)
- 【歯の状態】
- 歯に穴はあいていないが、カルシウム分が少なくつやがなくなり、白く濁って見えたり薄い茶色に見えたりします。
- 【症状】
- 痛みなどの自覚症状はほとんどありません。
- ※CO(初期むし歯)の状態であれば、フッ素の応用などにより、再石灰化を促進させることで健康な歯に戻すことができます。
- ※フッ素について詳しくはこちらをご覧下さい。
C1(エナメル質のむし歯)
- 【歯の状態】
- 歯の表面(エナメル質)に穴があき、欠損がある状態です。
- 【症状】
- 痛みやしみる感じはない場合が多いです。
C2(象牙質まで進んだむし歯)
- 【歯の状態】
- むし歯が歯の内部に広がり象牙質まで進んだ状態です。
- 【症状】
- 冷たい飲食物がしみることがあります。
C3(歯髄まで進んだむし歯)
- 【歯の状態】
- むし歯が歯髄(神経)まで進んでいる状態です。
- 【症状】
- 激しい痛みを感じることが多い。放置すると神経が死んでしまい、痛みがなくなることがあります。
C4(歯根だけ残ったむし歯)
- 【歯の状態】
- 歯冠部(歯肉から上の部分)がほとんど崩壊し、歯根だけ残った状態です。
- 【症状】
- 歯髄(神経)が死んでしまい、痛みがなくなる場合があります。
歯根の先に膿が溜まると激しい痛みが起こり全身の健康を害することにもなります。保存治療は困難なため通常は歯を抜くことになります。
むし歯の予防方法・対処方法
むし歯を予防するには、原因となるプラークをきちんと取り除くことと、歯の質を強くすること、飲食、特に砂糖の摂り方に注意することが基本です。
毎日セルフケアを実行し、歯科医院で定期健診を受けましょう。
1.プラークを除去するために大切なこと
- 1.丁寧な歯みがきを心がけましょう
- 2.むし歯になりやすい歯と歯の間は歯間清掃用具を使用しましょう
- 3.歯みがき剤を使用してみがきましょう
2.歯の質を強くするために大切なこと
フッ素(フッ化物)を上手に活用しましょう
フッ素には歯の質を強くし、再石灰化(溶けたカルシウム分を再び歯に戻す作用)を促進し、細菌の働きを弱める働きがあります。フッ素の活用には次の方法があります。
年齢に合わせて複数を組み合わせて、むし歯を予防しましょう。
- 1.フッ素配合歯みがき剤を使う
- 2.歯科医院でフッ素を塗布してもらう
- 3.フッ素洗口を行う
3.飲食、特に砂糖の摂り方
1.「だらだら」の飲食は控えましょう
口の中は唾液の働きで中性に保たれていますが、食べたり飲んだりすると、酸性に傾きます。酸性の時間が長いとそれだけむし歯になりやすくなります。頻繁に糖分を摂る食べ方や飲み方には注意しましょう。
2.「食べたらみがく」を心がけましょう
食事を摂ると、糖分を利用し細菌が酸を作ります。
食べたらみがくことを心がけましょう。
また、就寝中は唾液の出が少なくなるため、細菌が増え活発に活動します。就寝前は、ていねいな歯みがきを心がけましょう。
監修:神奈川歯科大学 特任教授 荒川浩久